病理組織学的標本を用いた免疫組織化学染色等によるがん抗原等の発現・分布の解析

「病理組織学的標本を用いた免疫組織化学染色等によるがん抗原等の発現・分布の解析」

はじめに

東京大学大学院医学系研究科衛生学分野では、東京大学医学部附属病院病理部・人体病理学教室、大鵬薬品工業株式会社との共同研究として、東京大学医学部附属病院で腫瘍の切除手術を受けられた患者さんの病理組織標本の一部を対象に免疫組織化学染色などを実施し、がんの発生・進展と関連するタンパクや糖鎖などの発現状況を調べる研究を進めております。この研究は腫瘍に対する知見を深め、将来の医療に役立てる上でとても重要と考えております。

この研究の対象者に該当する可能性がある方で、試料・診療情報等を研究目的に利用されることを希望されない場合、研究への協力を希望されない場合、あるいは協力を途中でおやめになりたい場合は、2024年2月28日までに末尾に記載の問い合わせ先までご連絡ください。

① 試料・情報の利用目的及び利用方法(他の機関へ提供される場合はその方法を含む)
この研究の対象は、既に倫理審査で承認され実施許可を得て進められている以下の研究課題の対象となっている患者さんです。
・G2211「肺腫瘍のゲノム・遺伝子解析とその臨床病理学的意義の解明」:2003年9月9日以降に当院で肺腫瘍の切除手術を受けられた患者さんのうち一部の方が対象となります。
・G2210「肝腫瘍のゲノム・遺伝子解析とその臨床病理学的意義の解明」:2003年12月22日以降に当院で肝腫瘍の切除手術を受けられた患者さんのうち一部が対象となります。
・G3521「上部消化管腫瘍のゲノム・遺伝子解析とその臨床病理学的意義の解明」:2003年9月9日以降に当院で上部消化管腫瘍の切除手術を受けられた患者さんのうち一部の方が対象となります。
・#2381「ティッシュアレーを用いた癌関連遺伝子の病理組織学的解析」:1955年以降に当院で腫瘍の切除手術を受けられた患者さんのうち、ティッシュアレーが作成された一部の方が対象となります。

 この研究は、免疫組織化学染色を行うことで、がん細胞その他の腫瘍組織を構成する細胞において、がんに関連するタンパクや糖鎖などがどの程度に発現しているかを調べることによって、新しいがんの治療標的となる物質を探索することを目的としています。対象患者さんが手術で採取された病理組織検体を用いて解析します。
 この研究の具体的な手順と内容は以下のとおりです。
 まず、手術標本の一部を使ってホルマリン固定標本・凍結標本およびティッシュアレイのスライドを作成します。その後に、大鵬薬品工業株式会社が独自に確立した免疫組織化学染色条件を用いてさまざまな抗体や標識物質を用いてスライドガラス上の標本を染色し、顕微鏡を用いて染色像の評価を行います。免疫組織化学染色の実験は、主として東京大学大学院医学系研究科衛生学分野で実施されますが、個人に関する情報が記載されていない状態のスライドガラスを大鵬薬品工業株式会社へ送付し、大鵬薬品工業株式会社において免疫組織化学染色を実施することもあります。後者の場合であっても、患者さんの個人に関する情報は共有されません。
 免疫組織化学染色の評価データについては、東京大学大学院医学系研究科衛生学分野と大鵬薬品工業株式会社の間で、パスワードロックを掛ける等のセキュリティーに留意した電子的方法によって共有されます。評価データは個人に関する情報とは切り離された状態にされており、大鵬薬品工業株式会社においては個人情報を用いた解析は行いません。
 この研究は通常の病理組織検体を対象として行われますので、患者さんご本人の診療内容には全く影響を与えませんし、不利益を受けることもありません。
本研究において扱う病理組織標本や免疫組織化学染色の評価データは、東京大学大学院医学系研究科衛生学分野および大鵬薬品工業株式会社のセキュリティ対策のなされた環境で保存されます。この研究によって得られた成果を元に学会や論文で発表することがあります。その際にも、患者さん個人のお名前やご住所などの個人情報は仮名加工を行い、その保護には十分に配慮いたします。このように、この研究を進めるにあたっては、患者さんの個人情報の取り扱いに最大限の配慮を講じさせて頂きます。

② 利用し、又は提供する情報の項目
 この研究では、①で記載いたしましたように患者さんの手術や生検などで採取された病理組織検体(パラフィン包埋検体・凍結検体・ティッシュアレイ標本)が研究対象として用いられ、免疫組織化学染色の染色像を評価します。個人情報とは切り離された状態の臨床病理学的情報(がん種、組織型、分化度、Stage、性別、年台等)と免疫染色の結果との関連性の解析は行いますが、個人情報と関連付けた解析は行いません。また、この研究は通常の病理検体を対象として行われますので、患者さんご本人の診療内容には全く影響を与えませんし、不利益を受けることもありません。

③ 利用する者の範囲
この研究は以下の研究機関で実施します。

主たる研究機関
・東京大学大学院医学系研究科 衛生学分野
 研究代表者:石川 俊平(教授):研究の統括
・東京大学医学部附属病院 病理部
 東京大学大学院医学系研究科人体病理学・病理診断学分野
 共同研究者:牛久 哲男(教授):試料採取と管理・仮名加⼯

共同研究機関
・大鵬薬品工業株式会社
 研究責任者:吉村 千穂子(研究本部 第一研究所 副所長):データの解析

 本研究で取得した試料・情報は、東京大学と大鵬薬品工業株式会社との共同研究契約にもとづいた研究の範囲でのみ使用され、それ以外の二次利用は致しません。また、今後共同研究の内容に変更があった場合や共同研究機関が加わった際には、こちらで通知いたします。

④ 研究期間
 本研究は東京大学医学部倫理委員会の承認を受け、東京大学大学院医学系研究科・医学部長および共同研究機関の機関の長の許可を得て実施するものです。
 研究期間:実施許可日~2028年3月31日

⑤ 情報の管理について責任を有する者の氏名又は名称
東京大学大学院医学系研究科衛生学分野
教授 石川 俊平

⑥ 利益相反
 この研究に関する費用は、東京大学大学院医学系研究科衛生学分野の運営費交付金、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの研究費、および共同研究契約にもとづいた大鵬薬品工業株式会社との共同研究費によって実施されます。また東京大学医学部利益相反アドバイザリー機関に報告し、利益相反マネジメントを適正に行っています。

⑦ 研究対象者、またはその代理人(代諾者)の求めに応じて、研究対象者が識別される試料・情報の利用又は他の研究機関への提供を停止すること。
 この研究に関して不明な点がある場合、また患者さんの試料・データをこの研究に使用させて頂くことについて、患者さんがご同意なされない場合には、下記までご連絡頂きたいと存じます。その場合には、試料・データの使用を停止させて頂きます。この研究のどの時点で同意を撤回することも自由ですが、一度研究の成果を公開してしまいますと、その部分については取り消しが非常に難しくなることはご理解ください。なお、この研究は東京大学医学部倫理委員会の承認を受け、東京大学大学院医学系研究科・医学部長の実施許可を得て実施するものです。また、ご自身の検体について研究への使用をお断りになった場合でも、将来にわたって患者さんが当院における診療上の不利益を被ることは全くありませんので、ご安心ください。ここで、代理人(代諾者)とは患者さんが未成年、もしくは成人で十分な判断能力のない方の場合に本人に代わって研究への参加に同意された方を指します。
 研究へのご協力を患者さんがご同意なされない場合には、2024年2月28日までに下記までご連絡頂きたいと存じます。

⑧ ⑦の研究対象者又はその代理人の求めを受け付ける方法
 下記の連絡先にご連絡下さい。

                                                                    2023年12月

牛久 哲男
東京大学医学部・大学院医学系研究科 病因・病理学専攻
人体病理学・病理診断学講座
電話 03-5841-3341 ファクシミリ 03-3815-8379